2007年10月14日 読売新聞より 兵庫県猪名川町で2日、妻が自宅に放火して夫と小学生2人を含む一家4人が死亡した無理心中事件で、夫婦が近隣住民から5000〜3万円の借金を繰り返していたことが、川西署の調べでわかった。度重なる借金申し出を断る住民もおり、困窮する暮らしに将来を悲観したことが動機とみられている。最近、生活苦とみられる無理心中が全国で相次ぐ。なぜ追い詰められてしまうのか。専門家は「極端な格差拡大が絶望感を深めている。悲観せず相談することが大切」などと訴えている。
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■度重なる借金□
一家は4年前に転居してきた。瓦職人の高村憲睦さん(47)は仕事が減り、今年4月から妻がパートに出ていた。
「ちょっと困ってるねん」。そう言って借金を申し込んできた高村さんに近所の男性(70)は昨年末、3万円を貸した。3か月後にはきちんと返済があった。別の住民も3回、計2万円を貸し、そのつど返してもらったが、4回目の申し出は断った。
最近は、妻の玉枝容疑者(46)の勤め先には取り立ての電話がかかり、自宅周辺で金融業者とみられる車が度々目撃された。川西署は、夫婦が近隣からの借金だけでは生活が立ちゆかなくなり、消費者金融から借り入れ、追い詰められていったとみている。
□新たな貧困■
生活苦が原因とみられる無理心中は最近、連続して起きている。
京都市で7月、中高生の子供3人を絞殺、自殺を図った男(42)は数年前から定職がなかった。大阪市東淀川区で同月、男性(34)が妊娠中の妻と子供2人を道連れにしたとされる事件では、男性は900万円近い借金を抱え、預金残高は43円だった。
高橋重宏・東洋大教授(社会福祉学)は「戦後多かった一家心中は生活が豊かになるにつれ激減したが、親の失業が増えたり、生活保護が受けにくくなったりで新たな貧困が生まれ、増加傾向にあるとみられる。子供は親に帰属するという家族観も残っており、道連れにされるケースは今後も予想される」と指摘する。
■兆候なし□
大阪の事件では子供2人が通う保育園には保育料が納められていた。猪名川の事件でも、夫婦の知人は「子供たちの服装もきちんとしていた。生活苦なんて……」と話し、命を絶つほどの貧窮には気づかなかった。いずれのケースでも専門機関に相談したり、生活保護を求めたりした形跡もない。
「関西いのちの電話」の八尾和彦事務局長は「周囲と生活レベルが違うところを見せたくなくて無理をした揚げ句、子供の命を奪うという身勝手な道を選んだのだろう。相談してくれれば、絶望から抜け出す糸口は必ず見つかると伝えたい」と呼びかける。
□「虐待の特殊事例」■
厚生労働省は3年前から、18歳未満の子供が亡くなる無理心中を「虐待の特殊事例」ととらえて実態把握を開始。犠牲になった子供は2004年に5件8人、05年は19件30人に上った。
社会評論家の赤塚行雄さんは「格差に悲観するケースが増えているのでは。心理的に追い込まれても、近隣関係が希薄で孤立してしまう。改めて人間関係のあり方を考え直すときが来ている」と言う。
2007年10月14日 読売新聞より




